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2020年08月

2020.08.28

FTMとの出会い

 「あ、アタシ、FTMなんで」

本屋でアルバイトをしていた頃、一緒に品出しを担当していた女の子を好きになって、思い切ってコクったところ、そう言われてあっさりフラれた。
いや、FTMと言う存在がいることは知っていたが、まさか身近なところでFTMとの出会いを果たすとは思わなかった。
ただ、どう見ても女の子だった。おっぱいデカ味だし(ちなみに、おっぱいで惚れたわけじゃない)。
で、アタシFTMだけど友達としてならいいよ、と言うことで、あんまり気まずくもならず、翌日からも変わらぬ関係は続いた。僕としては、そうかあFTMなのかあ、だったらしょうがないね・・・と割り切りきれなかったところは結構つらかったが。
でも、ゴハンの誘いにも乗ってくれたし、休みの日には一緒に買い物に出かけたりもして、傍から見ればカップルに見えていたと思う。実際に社員さんたちも僕たちが交際していると思っていたようだ。
けれども、本人からしてみたら、同世代の男友達でしかない。頻繁にボディータッチもされたが、彼女にしてみれば男同士のコミュニケーションにしか過ぎなかったわけだ。
だが、男同士の付き合いなんだから、おっぱい触っても怒られないかなーと考えたりしたものの、そう言う時だけ相手を女性として見てしまったりもした。FTMとの出会いも厄介なものだな、などと思ったりしたものだ。
もちろん、僕の恋心が完全に消え失せてはおらず、やっぱり男女の付き合いがしたいと何度か口説いたこともある。しかし、そのたびに「アタシ、FTMなんで」と釘を刺されまくった。
とは言え、彼女が他のアルバイトの女の子と特に仲が良かったわけではなくて、本当にFTMなのかな?との疑問は抱えていた。
ところが、実は彼女にはカレシがいたのである。相手はもちろん男性だ。僕と友達付き合いしている裏で、しっかりと男性社員と交際していたのである。
それを知った僕が「FTMじゃなかったの?」と問い詰めると、彼女は「あはは、ごめんねー」と明るく真相を明かしてくれた。
「FTMって言っておけば、変な男も寄ってこないんじゃね?とカレシに言われて」
僕は変な男扱いだったのかよ!

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